K&T "VL" #2

・・・ 前回からの続きです。


さて、まさに「ヴィンテージの個体の中に数パーセントのみ存在する緩いテンションで巻かれたピックアップ」の存在を高野氏が発表した直後、こういった「緩く巻かれた個体の再現」が飛び込んでくるあたり・・・
ベースのオーナーとK&T高野氏の引き合いを強く感じずにはいられません・・・

この変形。見た目は勿論ですが、これだけ様子が変わってしまっているコイル。
キャパシタンスも相当変化している事でしょう。
そして、これがサウンドに与える影響は・・・?
Vintage P.U

フロントピックアップのみが極端に変形しています。ネック側とブリッジ側にコイルが広がった様な形状になり、この変形によりサウンドは(極端に言うと)PBのサウンドに近くなります。
リアはそれほど変形していません。つまり(極端ですが)PJレイアウトに近いサウンドの傾向にあります。

さらに、それだけではありません。
VLの特徴としては以前も述べましたが、
ピックアップ・ボビンに巻くヘヴィーフォームワイヤーを「可能な限りテンションをかけずに巻上げる」事によって、線径(線の太さ、形)を変えずにキープしたまま巻き上げます。
つまり、ワイヤーを細く変形させずにピックアップを巻く事で情報量を同じターン数の他の物より多く送り出す事ができます。

さて、音の違いを生み出していたナゾは解けました。
そしてオーナーが何本も同年代のベースを所有してもこの音が出ない理由も理解できました。こんなに変形してしまったヴィンテージJBの(しかもこの年代の)ピックアップ、2つと無いものでしょう!
確かに、オーナーから「フロントの音が違う」と言う事は聴いていましたし、我々もチェック済でした。


問題は「これが再現できるのか?」
そう、ピックアップをバラす訳にはいきません。
つまり、計測した各種の数値が重要になってきます。

まずは慎重にボビンの形状を再現していきます。
そして、それ以上の変化が経年変化で起こらない様、形状をキープします。
ポールピースのスタガードも再現されています

そしてVLで「規定のターン数を巻終えた時点で、理想的な形状と抵抗/キャパシタンス値」になるように、計算し、巻上げてゆきます。
ただ、巻く訳ではありません。巻き始める前に、その音の答えが計算され、数値として弾き出されます。
後はその通りに仕上がるように、ワインディングされてゆきます。

その過程は残念ながら我々にも見る事はできませんでしたが、高野氏から完全に再現されたそのピックアップの画像が送られてきました。
*コイルの色が赤く見えるのは照明の関係です

「完成しましたがあまりの変形故、ピックアップの取付までこちらで行います」
とのことで、再度持ち込み。高野氏に取付けてもらってオーナーの元へ。

オリジナルピックアップとK&T CUSTOM VL '63と弾き比べます。

K&T CUSTOM P.U

ORIGINAL VINTAGE P.U

結果は、大成功でした。

あり得ない、太さと高域のきらびやかな音色。
アクティブピックアップの様なパワフルさ。
でも音色はストレート。極上のクリアーさも兼ね備えています。

確かに、普通のJBピックアップではこの音は得られない。
さらにK&Tはフロントの形状の変化に合わせてリアのワインディングも調整。
バランス的には使い易くなりました。
これにはオーナー様も大満足。「不思議だなぁ」を連発しながらも、その奥深いトーンに酔いしれているご様子。


「やっと、この音が出ましたね!」喜んで頂けてなによりです。

勿論、高野さんからは「こんなに手間のかかるピックアップはしばらくは作れないかも。」とのお話でしたが、オーナー様は「うーん。フレットレスにもこれを載せてみたいな・・・」とおっしゃっておりました!

まだまだ終わらない、オーナー様の拘り・・・??
お二人とも、今後ともよろしくお願いいたします。

murats

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